力道山の命日、ご存知ですか?

力道山といえばプロレスの父、そしてヒーロー、さらにテレビとプロレスを結びつけ、その相乗的な発展の道筋を掃き清めた人である。

もうプロレスファンですらもその活躍を知っている人の方が少ないと思うが、その力道山の48回目の命日が今日だ。

もう力道山だけでなく、その長男も鬼籍に入り、「刺殺」者の娘がリングに立ち、さらに引退して出産するなど、時間は確実に動いている。しかし、これだけの大ヒーローなのだから、せめて命日ぐらい、事件や功績を改めて思い出す機会としてもいいだろう。

1963年12月8日午後11時10分ごろといわれる。力道山は、東京・赤坂のナイトクラブ「ニュー・ラテン・クォーター」で、住吉連合系暴力団の大日本興業組員に、「足を踏んだ」「いや、踏まぬ」のいざこざから登山ナイフで腹を刺されたとされる。

自宅(現在の都営地下鉄馬込操車場)近くの大田区・大森山王病院へ搬送され、一時は快方に向かっているとも報じられたが、1週間後の15日、腹膜炎から腸閉塞を併発。2度の手術の甲斐もなく死亡した。

刺されたときの傷の浅さから、力道山の死因についてはいろいろな説が取りざたされた。

もっともミステリアスだったのは、付添をしていたレスラーの桂浜(田中米太郎)の目を盗んで、何者かが力道山に水を飲ませた、サイダーを飲ませた、もしくは自ら飲んだ等の術後ショック説。

しかし、最期を看取ったのは桂浜ではなく平井光明(後のミツ・ヒライ)といわれており、「登場人物」からして怪しい。

さらに、アントニオ猪木も、自分が看取ったような話をすることがあり、真相究明をいっそう困難にしている。

では真相は闇の中なのかというと、力道山夫人の敬子さんは、『プロレスへの遺言状』(ユセフトルコ著、河出書房新社)に収録されているインタビューで、力道山は長年の闘いから体中ボロボロで、治療に耐えられない状態であったことを告白している。

そして、その後上梓された『夫・力道山の慟哭―没後40年 未亡人が初めて明かす衝撃秘話』(双葉社)では、ボロボロな体に文字通り致命的だった「医療ミス」があったと述べている。

夫人だからすべて正しいことを言っているとは限らないが、確かに「ボロボロな体」については他の人も証言している。

筆者は、かつて、日本プロレス中継、全日本プロレス中継で解説をつとめた、元東京スポーツ記者の山田隆さんから、晩年の力道山について伺ったことがある。

山田隆さんはこういっていた。

「お客は力道山の空手チョップを見に来ていたわけですが、彼はちゃんとそれを知っていて、必ず一試合に一度は手刀を振り上げていましたよ。でも、晩年、体力が衰えてからは、ずいぶん辛そうでしたね。

当時、鈴木クンという秘書がいたんですが、彼の鞄の中には薬が何種類も入っていたようです。それでも、力道山は常に"お客さんはワシを見に来るんだ。頑張らなくちゃあな"と言っていました」

その薬が具体的に何であるか、山田隆さんは積極的に語ろうとはしなかったし、筆者も突っ込んで聞きもしなかった。

それがたとえ何であろうと、力道山が疲労や衰えをそれによって押さえ、必死になってコンディションを維持していたことが確認できたからだ。

力道山は、当時協会の副会長をつとめていた有力なプロモーターの一人だった、田岡一雄・山口組三代目組長の生き方に重なることがある。

それは、事業(生業)を持つということである。

力道山は様々な事業にかかわり、引退後の設計図も描いていた。が、結局はプロレスのヒーローとして頑張った代償が命取りになったのかもしれない。

まさに力道山は、プロレスに殉じた男というわけだ。

1990年頃、ターザン山本氏の活躍や女子プロレスの交流戦、四天王プロレスなどで空前のフィーバーが起こったが、そこにかげりが見え、ジャイアント馬場がなくなると、ミスター高橋のカミングアウト本が出たことで、以後は加速度をつけてプロレスは冬の時代に入ってしまった。

何より、プロレスをゴールデンタイムで放送する地上波がないという今の状態はさびしい。

力道山が刺されなくても、今、生きているかどうかはわからないが、もし生きていたら、今のプロレス界の危機をどう打開するか関係者は知恵を借りたいところだろう。


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