ジャイアント馬場はケチではなくシビアだった!
昭和プロレスの秘密を解き明かす『プロレス真実一路』(宝島社)が発売された。

別冊宝島1678 プロレス 真実一路
やがて悲しき新日本vsノア対抗戦
今月のテーマは「「中邑真輔」はそんなにショッパイのか」
マット界の深奥を描くシリーズ!苦境のノアと手を組んだ新日本の「土下座外交」。ザ・コブラから27年、空白の「SWS後」を語ったジョージ高野。前代未聞の興行中止劇を演じた「ハッスル」崩壊の真相。28年前、あの「猪木監禁事件」で拳銃を持ち出し猪木を監禁した男の告白ほか。大好評・原田久仁信のプロレス劇画は、内外タイムス大破産の内幕を描く『ゴマシオ「百年の孤独」』。
まずは目次をご紹介しよう
イントロダクション
これでは「仲良し交流戦」と呼ばれる 新日本が食らった「毒まんじゅう」
ノアの原子炉「秋山」「小橋」が「臨界」を迎えるXデー
中邑真輔は本当にしょっぱいのか
インサイダー覆面座談会! 専門誌は永久に書けない 「1・4ドーム」「契約更改」の不穏な裏舞台
スクープ新資料発掘! G馬場「ケチ説」を覆す 全日系レスラー「真実のギャラ」一覧 文=若瀬佐俊
ジョージ高野ここにあり さすらいの男が語った我が青春の「SWS」
祝・新刊発売! 倉持隆夫(元・日本テレビアナウンサー)vsザ・グレート・カブキ 「馬場さん、話してすいません!」
ミスター高橋がバカ負け反論! 「それは違うでしょターザン山本さん」
「猪木監禁事件」28年目の真実 私が起こした「拳銃監禁」の一部始終 インタビュー=唐田知明(元「東声会」京都支部長)
「ハッスル」崩壊劇に見る マット界「カネの切れ目」の哀愁
小池栄子もビックリ! 「パチスロ社長」から6000万借りた坂田亘と国税庁の「場外バトル」
井上譲二・元『週刊ファイト』編集長 『「つくりごと」の世界に生きて』
"ゴマシオ"永島勝司が語った 「内外タイムス」破産劇の一部始終 インタビュー=永島勝司(元新日本プロレス取締役宣伝部長)
「地獄のど真ん中」継続中! 内外タイムス大破産! 劇画 ゴマシオ「百年の孤独」 作・画=原田久仁信
もっとも興味深かった記事は、昭和プロレス史上の大事件SWS問題に絡む裁判だ。といっても公判そのものではなく、そこで明らかになったことである。
「新資料発掘! G・馬場『ケチ説』を覆す全日本系レスラーの『真実のギャラ』一覧」という記事がそうだ。
ウェブ掲示板では、「馬場は守銭奴」「全日は安いギャラ」「カブキのギャラアップは500円」といった書き込みが決まって行われる。これは、昭和プロレスを語る上での約束事のようになっている。
全日本プロレスは、新日本プロレスのような年俸制ではなく試合給だから秋山準がローンを組めなかった。試合給だから選手は休めなかった。谷津がケガの補償がないことで愛想が尽きてSWSに行った、などといったエピソードもしばしば書かれる。
しかし、筆者はそれに対して懐疑的だった。
全日本プロレスが試合給なのは事実かも知れないが、休んだから即お金がもらえなくなるというわけではなく、所属選手ならそのシリーズの試合給は全額保障、その後も一定期間は一定割合が出ると何かで読んだことがあったからだ。
外人やフリー選手も、試合をしなくてもリングに上がって挨拶をすることで「出場」とみなされると、解説の山田隆さんから聞いたこともある。
また、会社の都合で休む場合にもお金が出ることは、各選手の証言で明らかだった。
たとえば、高杉正彦はメキシコ遠征を無断で帰国していったん解雇されたが、ラッシャー木村の取りなしで全日本のリングに復帰した。その後、ジャパンプロレスの合流で整理されたが、最後のシリーズは出ていなくてもギャラをもらい、かつ最強タッグのときにしばしばやっていた中堅日本人選手の「残り番」(巡業不参加)に対してもギャラは支払われていたという。
鶴見五郎が、ドル建てでもらっていたこともあって、優遇されていたことは本人がインタビューで語っている。ドル建てというのが、いかにも昭和プロレスらしい。
また、阿修羅原のインタビューで、原は現在厚生年金の受給者であることを述べている。厚生年金は会社が半分支払うものだが、国際プロレスや全日本プロレスの在籍期間に、それらの支払いが行われていないと原は受給者にはなれないはずである。今や、一般人でも社員とは名ばかりで社保のない雇用者もいることを考えると、昭和プロレスの団体所属レスラーは良い待遇だった。
前置きが長くなったが、同誌では、SWSの引き抜きが裁判になり、明らかになった該当選手のギャラが明らかにされている。
それによると、新日本の選手よりも全日本の同格の選手の方が好待遇であることが分かる。
ただ、同誌では、単純にギャラを試合数で割った1試合当たりのギャラを算出しているが、それは参考程度のものだと思う。
なぜなら、先にも書いたように、ケガで欠場の場合には「そのシリーズの試合給は全額保障、その後も一定期間は一定割合が出る」という特殊な計算方法を用いているので、単純に試合数では割れない数字だからだ。
また鶴見はドル建てフリー選手扱いなので、ギャラは高く見えるかもしれないが、保険や年金には入っていない。
鶴見の件では、鶴見を日本陣営に入れない(所属選手にしない)馬場が当時ずいぶん責められたものだが、実は鶴見の事情によるものだったことも同誌では明らかにされている。
昭和プロレスには様々な裏話があるということだ。
なお、肝心の裁判は天龍が2000万円、谷津が300万円で和解したらしいが、他の選手については和解事項がなく、同誌では「『各選手が年収の5倍という違約金を払う形で敗訴』したと谷津自身もほのめかしている(「アサヒ芸能」09年2月26日号)と書かれている。
もっとも、その違約金だってメガネスーパーが面倒見たのだろう。
それにしても、「移籍はギャラ年額の5倍の違約金」と契約書にうたっているとか、天龍については契約金の返還も求めたとか、ギャラの額どうこうよりもそういった話の方が凄い。
要するに、ケチではないが、シビアなのである。
三沢光晴が「奴隷じゃないんだから」というのも、選手の立場に立てばわかる気がする。
生活の面倒は見るけど勝手は許さない......徒弟制度の延長のような旧弊なやり方であることは間違いない。昭和プロレスには、そうした遅れた面があったということだ。
が、そうしないと身勝手なふるまいが後を絶たなかったのも確かであり、レスラーの側にも責任はある。
モラル、という曖昧なものが、これほど求められる世界もない。
いずれにしても、昭和プロレスの謎がまた、ひとつ解けた。
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